婚前契約書は結婚に先立ち男女が交わすもので、結婚生活に関する不安を解消し無用な衝突を避けるために利用されます。
契約ですから相手を一定程度拘束する力があり、これによって約束を反故にされるリスクに備えることができます。
ただし、婚前契約書の法的効力には限界もあります。ここでは、婚前契約書の法的効果や有効性について解説したいと思います。
■契約書としての法的効力がある
まず押さえておきたいのが、婚前契約書も他の契約書と同様の法的効力があり、基本的には取り決めた内容に契約当事者が拘束されるということです。
ですから例えば子どもの学校への送迎は父親が行うという約束であれば、父親は子どもの送迎に関して義務を負うことになります。
ただし当事者が合意したからといって何でも有効となるわけではありません。
当事者にとってあまりにも酷な内容であったり、公序良俗に反する内容などは契約としての効力を持ちません。
■公序良俗違反の内容は無効
例えば浮気(不貞)をさせないためとして浮気一回につき10億円を払うなどあまりも高額なペナルティを課すような内容だと無効になる可能性が高いです。
義務を課される人が相当のお金持ちであれば有効となることもあり得ますが、当事者にとってあまりも酷な内容となる場合は法的に無効です。
他には例えば妻は夫に完全に服従し口答えを一切許さない、などとするような内容も公序良俗違反と考えられるので契約としての有効とは言えません。
ただし、このような公序良俗違反の内容が一部組み込まれていても、それだけで契約全体が無効になるわけではなく、有効な内容があればその有効性は維持されます。
無効な内容のみが法的効果を持たないということです。
■契約による拘束力には限界がある
当事者間では、契約の内容を遵守するように相手に要求することができますし、契約違反に対して金銭的なペナルティを課しているのであれば、その支払いを求めることもできます。
ただし、裁判で契約の内容について法的な効果が認められるかどうかは、別途、検討する必要があります。
例えば、無断で異性と食事をしたら離婚するという取り決めがあって、夫がこれに違反した場合、妻は夫に対して離婚を求めることができます。
これに夫が納得すれば協議離婚が成立し無事に別れることができますが、もし夫が離婚を拒否した場合は、裁判所での調停を行い、それでも離婚できない場合、最終的に裁判を行うしかありません。
調停では契約違反が参考にされて調停委員が夫側に離婚を働きかけるかもしれませんが、拒否された場合は裁判で争うことになります。
裁判では裁判官が法律に定められた離婚原因にあたるかどうかで判断されることになり、契約違反があったからといって必ず離婚が認められるわけではありません。
このように契約は当事者の間で相手方を拘束する力があるものの限界があり、相手が義務の履行を拒否した場合はトラブルになることもあるということは覚えておきましょう。
■有効な婚前契約書を作るために
法的に有効な婚前契約書を作成するには法律の知識を有する専門家のアドバイスを受けながら進めるのが安全です。
大切なことは、あなたが何を望み、不安に対してどのような手当てを講じておきたいのかを明確にすることです。
「△△という不安があるので、〇〇という契約でこれに備える」という形で契約を構成していくので、法律知識のある弁護士に相談して契約を組み立てていくのが安全です。
下手に素人だけで進めてしまうと、有効な契約とならなかったり、抜け穴ができてしまい思った効果を得られないこともあります。
夫婦問題に明るい弁護士であれば的確なヒアリングから有効な婚前契約書を作成できるので、ぜひ相談してみましょう。